銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「そう。気が狂いそうな程痛かった。でも……君は知らなくていい」

……きっと相当酷い拷問を受けたのだろう。

「まだ痛いの?」

彼が拷問されているところを想像したら胸が痛くなって、心配で聞かずにはいられなかった。

「セシルは優しいんだな。怖がらずに、俺の心配をするなんて。大丈夫、もう痛くはないよ。腕の傷も血が止まったみたいだ。君に元気を分けてもらったしね」

私に向かってフッと微笑すると、ジェイはカーテンの隙間から外の様子を窺った。

「兵はいなくなったみたいだ。もうそろそろ行かないと……」

ジェイの言葉にがっかりする自分がいた。

「……もう行っちゃうのね」

「そんな事言わない。一緒に連れて行きたくなる。あと五年もしたら怖いな」

ジェイは何故かそんな謎めいた言葉を口にして苦笑する。
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