銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「その寝間着……ダメにしちゃったね」

不意に彼が私の寝間着に目を向けた。

そう言えば、これを破って止血したんだっけ?

それに、ところどころに彼の血がついている。

「気にしないで。他にもあるから」

ニコッと笑顔を作れば、ジェイは私の顎を掴んだ。

綺麗な青い双眸が私の目を射抜く。

「今の俺には何もあげるものがないから……」

優しい声で囁いて、ジェイはゆっくりと顔を近づける。

ドキッとしたその時、彼のその唇が私の頰に触れた。

微かに伝わる彼の唇の温もり。

そよ風のように爽やかで優しいキス。

「君に神のご加護がありますように」

王子様のように甘い言葉を囁いて、彼は私から離れた。
顔の熱が一気に上がる。

きっと私の顔は真っ赤になっているに違いない。

慌ててジェイにキスされた頰を押さえた。
< 15 / 263 >

この作品をシェア

pagetop