銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
当の本人はベッドを下りて、ウィングの頭を撫でている。

ウーと唸るかと思ったら、意外にもウィングは目を細め喜んでいた。

この子、私以外の人間が撫でると嫌がるのに……。

私だけでなく、ウィングまで懐柔するなんて本当に不思議な人。

「姫を守れよ」

ジェイは穏やか顔でウィングに命じる。

ワンと小さく頷く私の愛犬。

……彼がご主人様でもおかしくないかも。

自分もベッドを出てカーテンを少し捲り、外の様子を窺う。

ジェイが言っていたように、兵の姿は見えない。

背後に彼がスッと立ち、静かに窓を開けた。

「匿ってくれてありがとう。俺が言うのもなんだけど、知らない男を部屋に入れちゃダメだよ」

前に回ると、ジェイは少し屈んで私に言い聞かせる。

「あなたは勝手に入ったけどね」

茶目っ気たっぷりに言えば、彼はクスッと笑った。
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