銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
今、頭にあるのはジェイのことだけ。

エミリーの替え玉という任務を忘れそうになる。

……いけない。

いつか男爵家に戻るのに……、彼と離れることがわかっているのに……。

彼のことを好きになってる。

もう憧れじゃない。

この気持ち……どうやって止めたらいいの?

これ以上一緒にいたらますます彼を好きになって離れるのが苦しくなる。

「あと一ヶ月くらいだな。じゃないと完治しない」

厳しい表情で告げるジェイの言葉に素っ頓狂な声を上げた。

「一ヶ月も〜‼︎」

真顔で冗談を言っているのだろうか?

さすがに一ヶ月はない。

だってその頃には王太子の相手は決まり、私はコンラッド男爵の元へ戻っているだろう。

そのことを考えると胸がズキッと痛む。

「……無理。退屈で死んでしまいそう」
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