銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
本心は告げずにそんな不平を口にすれば、ジェイはどこか企み顔で微笑んだ。

「それなら今夜ちょうどいい退屈しのぎがある」

「今夜?晩餐会とかなら……欠席でいいわ」

令嬢達に恨みがましい視線で見られるのは嫌だ。

ずっと部屋にいたから体力も落ちているし、外に出て散歩でもしたい。

「それでまた宮殿を抜け出すのか?」

ジェイの鋭い視線にドキッ。

どうしてこの人は私の思考を読めるのだろう。

「部屋を一歩出れば近衛兵が警備をしているし、窓から抜け出すのも無理だ。庭には何匹もの犬を放しているからな」

彼の説明に苦笑する。

「……それは厳重な警備ね」

でも……犬ならウィングを飼っていたしうまく懐柔できるかも。

そんなことを考えたら「犬に噛み殺されるぞ」と彼に脅された。

……やっぱり考えを読まれてる。
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