銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「後でドレスを持って来させるから、逃げるなよ」

私の頭を子供にするように撫で、彼はゴードンと共に部屋を出て行った。

そんな彼の後ろ姿をじっと眺めながら思う。

ここ数日、私の怪我が心配だったのもあるかもしれないが、彼はあまり睡眠をとっていない気がする。

それに、顔には出さないけど、彼の身に纏っている空気がちょっとピリピリしているような……。

孤児院に行った日に襲ってきた男達を警戒しているのだろうか?

そう言えば……ジェイは孤児院にいたって言ってたよね。それってどういうことなのだろう?

ドアの方まで歩き、その前の壁に飾られている肖像画をじっと見つめる。

それは十七歳くらいの金髪の美しい少年が椅子に座って微笑んでいる絵。

最初はカツラ騒ぎや怪我でこの肖像画に気づかなかった。

……これはジェイだ。
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