銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
今は銀髪だが、元は金髪だったのだろうか?

彼は私のようにカツラを被ってはいない。

考えてみたら、私は彼のことをあまり知らない。

彼がどこの貴族の子弟で、なぜ孤児院にいて、そして、どうして最初に出会った夜に兵に追われていたのか……。

「やっぱりあなたはミステリアスな人だわ」

私の心はあなたにずっと盗まれたまま……。

肖像画を見ていたら、ノックの音がしてクレアが箱を手に持って入ってきた。

「ちゃんとお薬は飲みましたか?」

クレアの質問にフフッと笑って答える。

「ええ。あなたより口やかましい人がいるもの」

薬を飲むのを拒めば、すごく怖い顔であの人は怒る。

「それは、セシル様のことを思ってですよ。ジェイ様には何か言われました?」

「何かって?」

クレアの言っている意味がわからなくて聞き返した。

「求婚の言葉とか、愛の告白とか!」
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