銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
クレアが期待の眼差しで私を見る。

「ないわよ。この傷が治るのにもっとかかるって言われたくらい」

だいたい一緒にベッドで寝ているのに、彼は私にキス以上のことはしてこない。

『身体だけ繋がるのは簡単だが……』なんて言ってたけど、彼からしたら私なんか子供に見えて抱く気にもなれないのかも……。

「……ところでその箱は何?」

ジェイのことにはもう触れて欲しくなくて、彼女が持っている箱に目を向けた。

「ああ、そうでした!」

クレアは嬉々とした顔で箱の蓋をそっと開けると、何に入っている真紅のドレスを私に見せる。

「ジェイ様からですよ。これを今夜着るようにって」

その高級な絹をふんだんに使ったドレスに目を奪われる。

レースの飾りがついていない上品で、それでいて魅惑的なドレスだった。

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