銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
真っ赤な夕日が沈む頃、私はジェイが用意してくれたドレスを身に纏い、鏡の前に立っていた。

「綺麗ですわ。思わずうっとりしてしまいます」

鏡き映る私を見てクレアが頰を緩める。

ドレスは腕の部分がゆったりとしていて、傷も見えないし、動きやすい。

こんなドレス……初めてだ。

子供の頃はレースのフリルがついた可愛いドレスばかり着ていたが、これは違う。

胸元が大きく開いているし、腰の部分はかなり絞られていて、身体のラインを強調する。

最後の仕上げに黒毛のカツラを被ってエミリーに扮するが、このドレスで人前に出るのは躊躇してしまう。

「……なんだか胸元がスースーして慣れないわ。やっぱり欠席しようかしら」

逃げ腰で言えば、クレアが大きく首を横に振った。

「ダメですよ。ジェイ様ががっかりされます」

「がっかりなんてしないわよ。他にも令嬢はいるんだもの」

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