銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「ええ。私はあなたに……『怪我が治ったらね』って言ったわ。……実現するのに五年かかったけど」

目頭が熱くなるのを感じながら、彼の目を見つめて答えた。

「じいさんになる前にお前に再会出来てよかった」

茶目っ気たっぷりに笑うジェイに恨み言を言う。

「再会した時に王太子だって言ってくれたらよかったのに」

きっと……ここにいる令嬢の中で私だけが知らなかったに違いない。

私も馬鹿だ。

ジェイが王太子だと示唆するものはいくつもあった。

彼と出会った時、兵に追われてたのだってきっと塔を抜け出したからで……、ギリアンとゴードンに命じるのだって……、毎晩お風呂に入れるのだって……、そう言えば陛下にだって顔が似てるし……。

王太子殿下の名前……ジェイクだった!

いつもの私なら気づいていたはずだ。

ジェイが王太子だって。

ああ……もう!

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