銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「それが……まだお戻りになられていないです」

クレアは残念そうに答える。

「まだ?」

思わず驚きで声を上げた。

そのまま宮殿に泊まってしまったという事だろうか?

でも何だろう?

妙な胸騒ぎがする。

家に帰って来なかったなんて初めてだ。

「お母様はその事ご存知なの?」

精神的に病んでいる母が気になってクレアに確認する。

「はい。ですが、特に取り乱した様子はなく自室で休んでおられますよ」

母は可愛がっていた弟が今の国王に処刑されてからというもの、ショックのあまりおかしくなってしまった。

「落ち着いているのならそれでいいわ」

「もう朝食の準備は出来ています。お召し物に着替えたら、ダイニングルームにいらして下さいね」

私の着替えをテーブルの上に置くと、クレアは血で汚れたシーツや布団カバーを剥がして部屋を出て行く。
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