銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「……朝食なんて食べる気になれないわ」

ポツリと呟いてドレスに着替え、ウィングと一緒にそっと部屋を出る。

周囲には誰もいない。

「ウィング、お父様を迎えに行くわよ」

愛犬に小声で言い。足を忍ばせ階段を下りた。

クレアに言えばきっと止められるだろう。

でも、行かずにはいられない。

誰にも見つからないように静かに廊下を歩いて玄関にたどり着くと、そのままウィングを連れて外に出た。

まだ早朝だからか人通りは少ない。

いつもは馬車で向かう道を早足で宮殿に向かう。

息急き切りながら宮殿の門の前に辿り着き、門衛に声をかけた。

「私はレノックス公爵の娘でセシルと申します。父と面会したいのですが、ここを通して頂けませんか?」

私が名乗ると、門衛は眉をひそめ、冷たい言葉を返す。

「ダメだ。家に帰りなさい」
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