銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
「父がまだ帰って来ないんです。お願いです。通して下さい」

必死に頼むが、門衛は苛立たしげな顔で私を押し倒した。

「帰れと言っただろ!」

地面に倒れる私を見て、ウィングがガルルーと威嚇して門衛を睨みつける。

今にも門衛に噛み付きそうな愛犬に「ウィング、ダメ!」と声を上げて制した。

ウィングは大人しく引き下がる。

お供がいないから信じてもらえないのだろうか?

そんな事を考えながらゆっくりと立ち上がり、ドレスについた土を払うと、この場から直ぐに立ち去った。

宮殿近くの公園を抜ければ、髪を振り乱してこちらにやって来るクレアとバッタリ会う。

ああ……見つかってしまった。

これはお説教される。

そう覚悟したのだけど……。

「セ、セシル様〜、大変です!」

顔面蒼白のクレアの手には外套と袋。

一体何事?

まるで旅にでも出るみたい。
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