銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
大変な思いをして王都から逃げて来たのに、また戻るなんて……。

国王がまた変わったとは言え、近衛兵に見つかったら殺されるかもしれない。

現国王は亡き父とは従兄弟同士だけど、私に温情を示してくれるかどうかは怪しいところ。

王自身、弟によって失脚されられたのだ。

血の繋がりを疎んでいるかも……。

ブンブンと必死に首を横に振って断るが、コンラッド男爵は私の手を強く握って懇願した。

「セシル、頼む。エミリーだけでなく、この家の者を救うために替え玉になってくれないだろうか?」

そう言われてはもう断れなかった。

男爵には恩がある。

今、私が食べ物にも、寝る場所にも困らず暮らしていけるのは彼のお陰だ。

「……わかりました」

覚悟を決めて返事をすれば、彼の後ろに控えていたクレアが申し出る。

「私がセシルについて行きます」
< 32 / 263 >

この作品をシェア

pagetop