銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
きっともう何も残っていないに決まってる。

沈んでいたらクレアに話しかけられた。

「お辛いですよね。何も起こらず無事にまた男爵の元に戻れたらいいのですが……」

「……運命からは逃れられないかもね」

クレアがいなければ、私は五年前に死んでいたはずだ。

自嘲するように言えば、クレアは悲しげな目で私を見た。

「セシル様……」

「今はエミリーよ。忘れないで」

ニコッと笑ってやんわりと彼女に訂正する。

自分の運命を嘆き悲しむのはよそう。

私の命はもうどうなってもいい。

クレアだけは守らなければ……。

馬車は静かに宮殿の方に向かっている。

客車の窓から外を覗けば、私が住んでいた時よりも街は活気づいていた。

パン屋に花屋に果物屋……他にもいろんな店があって賑やかだ。

子供達も楽しそうに声を上げて笑いながら通りを駆け抜けて行く。
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