銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
怯えている暇なんてない。

私の下着の下には、短剣が忍ばせてある。

男ひとりなら何とかなるが、数人だと難しい。

今は……ダメだ。

「さあ、お客様がお待ちだ」

男達に引きずられるように部屋を出て、長い回廊を歩く。

この回廊は見覚えがあった。

頰に傷のある男が大きな扉を開ければ、そこはよく知った寺院の内部。

高いドーム型の天井、そこには宗教画が描かれていてとても神秘的だ。

窓は聖書にちなんだステンドグラス、床は大理石で深紅の絨毯が敷かれていて、とても厳粛で荘厳な雰囲気。

ここは、王の戴冠式が行われることで有名なケンジットで一番大きな寺院だ。

目隠しをして連れて来られた理由がわかった。

この場所を見て騒がれたくなかったのだろう。

朝の礼拝の時間は人の出入りが多いし、私達に騒がれて誰かに見つかりたくなかったんだ、きっと。

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