銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
俺の母はもう亡くなったが、昔娼館で働いていた。

だから、他人事には思えないのだ。

どんな立場の者であれ、幸福になる権利はある。

「馬鹿な王太子と笑われてもいい。みんなが幸せならいいんだよ」

フッと微笑してギリアンを見る。

俺が幽閉されていた三年の間に、ケンジットは大きく変わった。

サーロンの暴政によって、犯罪が増え、貧困で飢え死にする人々が増えた。まさに暗黒時代。

サーロンを倒してからの五年でだいぶ国を立て直したが、まだ国は豊かだと自信を持って言えない。

「それだけの容姿をしていながら、国政にしか興味がないのですから……。今まで気になった女性とかいなかったのですか?」

気になった女性というのはいない。

だが、女の子ならいた。

五年前、自分を救ってくれたあの天使だ。

年は当時十五、六くらい。

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