銀髪の王太子は訳あり令嬢に愛を乞う ー 今宵、お前を必ず奪い返す
対面に座っている令嬢の数は三十人程。

陛下主催の昼食会とあってみんな仕立てのいい豪華なドレスを身に纏っていた。

だが、そこに王太子殿下の姿もジェイの姿もない。

ジェイの姿がなくてホッとする。

彼がいたらとてもじゃないが平静でいられない。

テーブルから少し離れたところで王室の楽団が演奏をしているが、私の右横に座っている公爵令嬢が私を憎らしげに睨んできて全然耳に入ってこない。

「何であなたがそこなのよ」とその目で抗議しているのだ。

私だってこんな中央の席ではなく、退席してもバレなそうな末席が良かった。

落ち着き払っているように見せてはいても、内心ビクビクしていて……。

もし、ジェイが私のことを陛下に伝えていたとしたら、私は近衛兵に捕まるかも。

こんな場所じゃ逃げられないわ。
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