嘘つきな君
「ご無沙汰しております」
「あぁあぁ。そうだとも。君が就任してからずっと会っていなかったからね。最後に会ったのは就任パーティーの1年前だな。――よほど、忙しかったと見受けられる」
どこか棘のある言い方に、思わず眉根をピクリと動かす。
軽薄そうな唇を歪めて、独特の笑い声を出す園部会長。
葉巻なんかが猛烈に似合いそうな風貌だ。
見た感じ、40代中頃といった所。
「あっという間に立派になって。最初君が常務の席に就いたばかりの頃は、神谷グループの将来が不安になったがね」
「皆様に育てて頂いたおかげです」
「口も達者になったもんだな」
表情も変えずに頭を下げた常務の肩を、ポンッと叩いた園部会長。
自信に溢れたその鋭い瞳が一度私に注がれたが、全く興味がないといった様に、すぐに逸らされた。
「ようやく舞い込んできたポストだ。さぞ、嬉しいだろう」
噛みつかんばかりの距離で、常務を見つめる鷹の様に鋭い瞳。
ユラユラと揺れる真っ赤なワインが、何故か毒々しく見える。