嘘つきな君

「ご無沙汰しております」

「あぁあぁ。そうだとも。君が就任してからずっと会っていなかったからね。最後に会ったのは就任パーティーの1年前だな。――よほど、忙しかったと見受けられる」


どこか棘のある言い方に、思わず眉根をピクリと動かす。


軽薄そうな唇を歪めて、独特の笑い声を出す園部会長。

葉巻なんかが猛烈に似合いそうな風貌だ。

見た感じ、40代中頃といった所。


「あっという間に立派になって。最初君が常務の席に就いたばかりの頃は、神谷グループの将来が不安になったがね」

「皆様に育てて頂いたおかげです」

「口も達者になったもんだな」


表情も変えずに頭を下げた常務の肩を、ポンッと叩いた園部会長。

自信に溢れたその鋭い瞳が一度私に注がれたが、全く興味がないといった様に、すぐに逸らされた。


「ようやく舞い込んできたポストだ。さぞ、嬉しいだろう」


噛みつかんばかりの距離で、常務を見つめる鷹の様に鋭い瞳。

ユラユラと揺れる真っ赤なワインが、何故か毒々しく見える。
< 103 / 379 >

この作品をシェア

pagetop