嘘つきな君
どこかピンと張りつめた空気に肌がビリビリする。
互いに腹の中を詮索する様に、じっと見つめ合っている2人。
そんな中、低い声で言葉を先に発したのは、常務だった。
「仰っている意味が、分かりかねますが」
聞いた事もないような、低い声。
その声に、一瞬ゾクッと背筋が凍る。
それでも、そんな事にもひるまずに、口元に妖しい笑みを作る園部会長。
まるでヘビの様に常務の周りを、ゆっくりと巻きつく様に歩きだした。
「そのままの意味と受け取ってくれて構わない。悔しかったんだろう? 兄にすべてを注がれて」
兄――?
園部会長の言葉に疑問が生まれる。
神谷常務に、ご兄弟がいるなんて初めて聞いた。
それに、世襲制で作り上げられてきた神谷グループなんだから、常務のお兄さんがいるならば、必ず重役ポストに就いているはず。
でも、私が知る限り、そんな人はいない。