嘘つきな君
ザワザワと世界が煩い。
だけど、私達の周りだけ違う世界の様に音を無くしている。
ただ真っ直ぐに園部会長の後ろ姿を見つめる常務。
その瞳は、まるで光を無くした様に暗い。
「……常務?」
堪らなくなって、小さな声で呼びかけると、ゆっくりと私の方に視線が戻ってきた。
それでも、いつもよりどこか覇気のない瞳は、別人の様だった。
「そろそろ抜ける」
「――」
「帰りの電車を1本早めてくれ」
「常務――」
「悪いが、先に席を外す」
私を見ている様で見ていない瞳。
微かに笑った顔は、明らかに作られたものだった。
そして、私の言葉を一切聞かずに、そのまま会場の外に出て行った。
残された私は、静かに閉まった扉をじっと見つめる。
その中で、グルグルと疑問が渦の様に湧き上がる。
さっきの話は、どういう意味?
常務には、お兄さんがいて。
でも、亡くなっていて。
それに、愛情を奪われたって。
一体どういう事?