嘘つきな君
その後、急いで新幹線の時間を変更して私達は神谷ビルへと戻った。
帰りの新幹線の中で、常務は一言も話さなかった。
ずっと口を閉ざしたまま、移り変わる窓の景色を、ただ、じっと見つめていた。
◇
「ゴメン仁美――うん。今仕事終ったの。そう――うん。また来週でもいい?」
重たい足を引きづりながら、少し薄暗い社内を歩く。
会社に着いたのは、もうすっかりみんなが帰った後だった。
人気のない廊下を携帯片手に歩きまわる。
いつもは活気に溢れた社内も、こうやって見ると別の場所の様だ。
「ごめんね。もっと早くに連絡すればよかったんだけど」
本当は仁美とこれから飲む約束をしていたけど、今はそんな気分には到底なれなかった。
それに、今彼を一人にはできないと思った。
仁美には本当に申し訳ないけど、この埋め合わせは今度しよう。