嘘つきな君
その姿を見て、再び悲しくなる。

まるで、どこか打ちひしがれているように見える。


電気も点けないで、どうしたんだろ。

どうして、そんなに元気がないんだろう。

どうして、無理して笑うんだろう。

さっきの園部会長の言葉の意味は――?


聞きたい事は沢山あるのに、何故か言葉が出てこない。

近くに寄り添いたいのに、足が鉛の様に重たくて動かない。

そんな無言を貫き通す私達の間に、何とも言えない空気が流れる。


「……すいません。お邪魔ですね。お先に失礼します」


その空気に耐えられなくなった私は、逃げるように言葉を落とした。

そして、小さく会釈をしてから立ち去ろうとした、その時――。


「行くな」


真っ直ぐな声が、鼓膜に響く。

驚いて足を止めて振り返ると、さっきまで天を仰いでいた瞳が私を見つめていた。

その瞳に、無条件に心臓が跳ねる。




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