嘘つきな君
「でも、お邪魔じゃないですか?」


そんな心の内を悟られまいと、必死にいつも通りの自分を装う。

今にも聞こえてしまいそうな心臓の音の意味は、分からない。

分からないけど、嫌ではない。


締め付けられる甘い痛みを胸に、ただ見つめ合う。

息をするのも躊躇する程静かな空間に、彼の声が響いた。


「ここにいろ。命令だ」


ただ、入口で立ち尽くす私に告げられた言葉。

熱い、熱を持った言葉。

その瞬間、一気に胸が締め付けられて息も出来なくなる。

そして、その言葉に誘われる様に、一歩、また一歩と談話室の中に足を踏み入れた。


沢山の本に囲まれた小さな部屋。

その真ん中に置かれた大きなソファーに、ただ1人、彼だけが座っている。


中に入ってきたはいいけど、未だにどこか重たい空気が変わらず私達の間に流れている。

その空気に、どこか息苦しさを覚えて、気を紛らわせる為に辺りに目を移す。

すると、ふと彼の座っているソファーの隣にあるサイドテーブルに、沢山の本が積まれている事に気づいた。

何かと思い、何気なくその中の本を一冊手に取る。


英語で書かれた、物語の本。

頼りない英語力しかないけど、タイトルくらいは読める。

――だって、以前日本でも公開された有名な作品だったから。

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