嘘つきな君
「―――…カット!!」
何度も何度も集まっては配置に戻ってを繰り返して、1つのものを何度も撮り直す。
徐々に出来上がってきたものに胸を高鳴らせながら、目の前に映るものに目を凝らす。
こういう時、仕事ってありがたい。
無駄な事を考えなくて済むから。
「すいません芹沢さん。ちょっといいですか?」
突然名前を呼ばれて勢いよく顔を上げた。
その視線の先には、撮影所の入り口で手招きをしている撮影スタッフの姿。
その姿を認めて、短く返事をしながら駆けだした。
その瞬間――。
「わっ!! きゃぁっ!!」
地面を這う沢山のコードに足を取られて、バランスを崩した体がふらついた。
咄嗟にその体を支えようと反射的に体をよじる。
それでも、時既に遅しで無様にもその場に倒れ込んでしまった。
最後に聞こえたのは、カツンとパンプスが床に落ちる音――…。
「何やってんだっ!!」
一瞬の静寂の後、静かな世界を壊す怒号が聞こえて勢いよく顔を上げた。
目の前に広がっていたのは、コードの先に繋がった機材が引っ張られて倒れた光景。
それを見た途端、一気に血の気が引く。