嘘つきな君
「も、申し訳ございませんっ!!」
「現場で気を抜くなっ!! 機材が壊れていないか確認しろっ!!」
監督の声を皮切りに、再び世界がバタバタと動き出す。
そんな鬼の様な形相になった監督に謝ろうと、急いで体を持ち上げる。
それでも。
「――っ!」
突然、右足首に走った激痛。
思わず顔を歪めて、小さな悲鳴を漏らした。
挫いたんだ。
それでも、今はそんな事にかまっていられない。
痛みを押さえて体を持ち上げ、監督や撮影スタッフに頭を下げる。
「素人じゃあるまいし、何やってんだっ!!」
「申し訳ございませんっ」
深く下げた頭の下、地面を見つめながら唇を強く噛みしめた。
バカ!!
こんな失敗。
新人じゃあるまいし、本当気が抜けてるっ。
余計な事考えながら仕事なんてしてたからだっ。
自己嫌悪に駆られて、思わず泣きそうになる。
それを我慢する様に、拳を強く握りしめた。
その時――。
「大変、申し訳ございません」
聞こえたのは。
低い、独特のハスキーボイス。