嘘つきな君






「ありがとうございましたっ」


すっかり日も落ちた外の景色。

バタンバタンと閉まっていく車の扉の音を聞きながら、何度も何度も頭を下げる。

徐々に空になっていく駐車場に残されたのは、私と常務の2人だけ。

そして、最後の一台を見送った後、体の向きを変えて今度は隣に立つ人に頭を下げる。


「申し訳ございませんでした!!」


静かな空間に響く私の声。

冷たいコンクリートを見つめながら、唇を噛みしめる。

すると。


「ドジ」


コツンと微かに頭を叩かれたと同時に、そんな言葉が落ちてくる。

恐る恐る顔を上げると、深い溜息を吐いた常務が私を見下ろしていた。


「す……すいません」

「どんだけ転べば気済むんだ?」

「え?」

「初めて会った時も転んでただろ」


呆れた顔でそんな事を言うもんだから、思わずポカンと口を開けたまま固まってしまった。

その言葉の意味を理解しようと、記憶を遡る。


初めて会った時――?

その言葉に、ようやくあの光景が甦る。


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