嘘つきな君
◇
「ありがとうございましたっ」
すっかり日も落ちた外の景色。
バタンバタンと閉まっていく車の扉の音を聞きながら、何度も何度も頭を下げる。
徐々に空になっていく駐車場に残されたのは、私と常務の2人だけ。
そして、最後の一台を見送った後、体の向きを変えて今度は隣に立つ人に頭を下げる。
「申し訳ございませんでした!!」
静かな空間に響く私の声。
冷たいコンクリートを見つめながら、唇を噛みしめる。
すると。
「ドジ」
コツンと微かに頭を叩かれたと同時に、そんな言葉が落ちてくる。
恐る恐る顔を上げると、深い溜息を吐いた常務が私を見下ろしていた。
「す……すいません」
「どんだけ転べば気済むんだ?」
「え?」
「初めて会った時も転んでただろ」
呆れた顔でそんな事を言うもんだから、思わずポカンと口を開けたまま固まってしまった。
その言葉の意味を理解しようと、記憶を遡る。
初めて会った時――?
その言葉に、ようやくあの光景が甦る。