嘘つきな君

堪らなくなって、視線を慌てて下に下げる。

胸の痛みに、窒息してしましそうになる。


どうして、そんな事言うの?

どうして、優しくするの?

どうして、期待させるような事を言うの?

そんな事言われたら、もっと好きになってしまうじゃない――。


心の葛藤が涙になって流れそうになる。

それを必死に止めて、暗闇の中を歩く彼の腕の中、強く瞳を閉じた。







「とりあえず、これで冷やしとけ」

「――…はい」


長い廊下に並ぶベンチの一角に下されて、しばらくして彼が氷の入った袋を私の右足に当てた。

ひんやりとタオル越しに伝わる冷たさに、ゆっくりと息を吐く。


それからしばらくして、常務は少し離れた場所で何やら電話をし始めた。

その広い背中を見つめながら、ぼんやりと何も考えずに足を冷やす。

すると。


「もうこの時間だから、どこの病院も空いてないな」


深い溜息を吐きながら、持っていた携帯をスーツのポケットの中に捻じ込んだ彼が、私の前にしゃがみこむ。

それを聞いて、わざわざ病院を探してくれていたのかと申し訳なくなる。

だけど、確かにもう夜も更けってきている。

救急以外は開いてないだろう。

それでも、別に病院へ行っても湿布を出されるだけだろうし、しばらく安静にしていれば治るはずだ。


「ありがとうございます。でも、平気です。しばらく安静にしていれば勝手に治ると思いますから」


そう言った私を同じ目線になった彼が、じっと見つめる。

それでも、呆れたように溜息を吐いた後、その視線を氷の当たっている右足に向けた。
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