嘘つきな君
堪らなくなって、視線を慌てて下に下げる。
胸の痛みに、窒息してしましそうになる。
どうして、そんな事言うの?
どうして、優しくするの?
どうして、期待させるような事を言うの?
そんな事言われたら、もっと好きになってしまうじゃない――。
心の葛藤が涙になって流れそうになる。
それを必死に止めて、暗闇の中を歩く彼の腕の中、強く瞳を閉じた。
◇
「とりあえず、これで冷やしとけ」
「――…はい」
長い廊下に並ぶベンチの一角に下されて、しばらくして彼が氷の入った袋を私の右足に当てた。
ひんやりとタオル越しに伝わる冷たさに、ゆっくりと息を吐く。
それからしばらくして、常務は少し離れた場所で何やら電話をし始めた。
その広い背中を見つめながら、ぼんやりと何も考えずに足を冷やす。
すると。
「もうこの時間だから、どこの病院も空いてないな」
深い溜息を吐きながら、持っていた携帯をスーツのポケットの中に捻じ込んだ彼が、私の前にしゃがみこむ。
それを聞いて、わざわざ病院を探してくれていたのかと申し訳なくなる。
だけど、確かにもう夜も更けってきている。
救急以外は開いてないだろう。
それでも、別に病院へ行っても湿布を出されるだけだろうし、しばらく安静にしていれば治るはずだ。
「ありがとうございます。でも、平気です。しばらく安静にしていれば勝手に治ると思いますから」
そう言った私を同じ目線になった彼が、じっと見つめる。
それでも、呆れたように溜息を吐いた後、その視線を氷の当たっている右足に向けた。