嘘つきな君

今思い返せば、あの時既に私は彼に恋をしていたのかもしれない。

第一印象は最悪だったけど、それでも、惹かれる何かがあったのかもしれない。

あの僅かな時間の中で。

どうしようもないスピードで。


「――…会社が神谷ホールディングスに買収されて、神谷さんと一緒に働く事になったんです」

「うん」

「それからしばらくして、あの人の我儘で突然秘書になって……一緒に仕事をするようになりました」


強引だったけど。

だけど、心のどこかで嬉しかった。

大勢の人の中から、私を秘書に選んでくれた事、嬉しかった。

私だけ、特別扱いされたみたいで嬉しかった。

< 159 / 379 >

この作品をシェア

pagetop