嘘つきな君
今思い返せば、あの時既に私は彼に恋をしていたのかもしれない。
第一印象は最悪だったけど、それでも、惹かれる何かがあったのかもしれない。
あの僅かな時間の中で。
どうしようもないスピードで。
「――…会社が神谷ホールディングスに買収されて、神谷さんと一緒に働く事になったんです」
「うん」
「それからしばらくして、あの人の我儘で突然秘書になって……一緒に仕事をするようになりました」
強引だったけど。
だけど、心のどこかで嬉しかった。
大勢の人の中から、私を秘書に選んでくれた事、嬉しかった。
私だけ、特別扱いされたみたいで嬉しかった。