嘘つきな君
悲しい程の沈黙が私達を包む。
そんな中暫くして、先輩の持っていたグラスの氷がカランと音を立てた。
それを合図の様に、先輩が再び静かに口を開いた。
「現社長の説得で、あいつら2人の兄弟は神谷一族の一員として迎え入れられた。そして、現社長の息子として、後継ぎとして育てられた」
その言葉を聞いて、ようやく理解できた。
始めに聞いた、先輩の言葉を。
引き取られたはずなのに、社長よりも後継者としては上だったって意味。
それは、常務の父親が現社長のお兄さんだったから。
一番後継者として上だった人の、息子だから。
「あいつの兄貴は立派だった。度重なる親族からの非難の中でも、めげずに勉強に励んだ。そして、ようやく一族から後継者として申し分ないとお墨付きを貰えた。だから、現社長は兄に全てを注ぎ、次男だった大輔には目もくれなかった」
「そんな……」
「期待を一身に受け、義父や親族からも大切に育てられた兄と、どちらからも愛されず、見向きもされなかった次男の大輔」
「――」
「あいつは、そんな世界で育ってきた」
「酷い……」
「そんな中でも、アイツは兄を慕い、どんな非難を浴びせられようとも、文句一つ言わなかった。まぁ、アイツはもともと、後継者だったり、そんな事に興味が無かったのかもしれないけどな。それに、アイツにはやりたい事もあったし」
そう言われて、思い浮かぶものがあった。
どこか懐かしそうに、談話室で本を持っていた姿を思い出す。
「――映画……」
「そうだ」
当たり。
と言う様に、人差し指を私に向けて微かに微笑んだ先輩。
そして、携帯を徐に取り出して、暫くしてから私に暫くして私にそれを手渡した。