嘘つきな君
「あの神谷グループの跡継ぎになったんだ。それは全てを得たのと同じ事だ。アイツの一言で日本の経済が動く。アイツは今、そんな世界にいる」
「――」
「だけど、それと同時にアイツは全てを失った。夢も、未来も、自由も」
突っ伏して、大泣きしてしまいそうだった。
彼の胸の奥には、どれ程の悲しみがあるのだろうと思って。
不意に見せる、どこか悲しそうな横顔が脳裏に甦る。
あの瞳の向こうには、何を想っていたんだろう。
一生背負っていかなければならない、神谷グループ総裁という地位。
だけどそれは、きっと彼にとっては重荷でしかない。
でも、そこでふと思う。
今までの長い物語の中で、胸に何かが引っかかる。
だけど、ある言葉が浮かんだ瞬間背筋が凍った。
まさか――と、思って。
そんな私を見て、微かに瞳を細めた先輩。
何の表情も灯らない顔で、私をじっと見つめた。
「気づいた?」
呟く様な小さな声が耳に届く。
それと同時に、ドクンと一度心臓が大きく鳴って息が出来なくなった。
勘違いだと思いたい。
そんな事、ありえないって。
だけど、嫌な予感がする。
じっとりと、握った拳に汗が滲む。
そんな中、小さく言葉を落とした。
「――政略……結婚」