嘘つきな君
まるで独り言の様に零れた、小さな声。
だけど、口にした事でよりリアルなものになる。
それでも、心のどこかで願っている。
間違っていてほしいと、願っている。
そんな想いを胸に、恐る恐る視線を隣に向けると、小さく頷く先輩がいた。
その表情を見て、あ。と思う。
口を開いた先輩を見て、耳を塞ぎたくなった。
「アイツはきっと、会社の為に好きでもないやつと結婚させられる」
その言葉を皮切りに、世界が一瞬にして凍りつく。
言葉が出なかった。
胸が締め付けられて、息も出来ない。
思考回路が停止して、何も考えられなくなる。
「神谷常務は……それでいいんですか?」
「アイツは社長に恩を返したいと言ってた。孤児になった自分達を引き取ってくれて、何不自由なく育ててくれたからって」
「だからってっ」
「それに、これはアイツの気持ち一つで片付く問題じゃない。神谷グループ全体の問題なんだ」
眩暈がした。
立ち塞がるものの、あまりの大きさに。
「それが、アイツの進む道だ」
「――」
「アイツの未来だ」
告げられた言葉を頭が理解しようとしない。
受け入れなきゃいけない現実が、頭に入ってこない。
だって、どう頑張っても私は常務の隣には立てなくて。
いずれやってくる、名前も知らない女の人と彼は結婚する。
そんな姿を、私は見ていなければならない。
それが、私の未来――。