嘘つきな君


途端に泣き出したくなって、唇を噛み締める。

どうにもならない現実が、あまりにも理不尽で。

彼が、あまりにも可哀想で――。


「政略結婚なんて……そんなの間違ってます」


呟いた言葉が、キャンドルで揺らめく世界の中に落ちる。

今にも泣きだしそうな私を見て、先輩は悲しそうに小さく笑って、ポンッと私の頭の上に手を置いた。

だけど、その振動でポタリと涙が落ちる。

耐えきれずに、ポタリと。


「そうだな」

「好きでもない人と、結婚なんて、そんなのっ」

「間違ってるよな」


穏やかな先輩の声を聞いて、涙の量が増す。

息も出来ない程、胸が締め付けられて苦しい。


悲しすぎる。

こんなにも、胸が痛む程好きなのに。

涙が出る程、好きなのに。

彼は、彼の事を好きでもない女の人と、結ばれてしまう。

もしも、互いに思い合っているのならば、身を引く事も出来たろうに。


「アイツが芹沢をどう思っているのかは分からない。でも、政略結婚の事を知っているから、アイツは今後誰とも付き合う事はないと思う」

「――っ」

「例え恋人が出来ても、その人と結ばれる事はないと分かってるから」


その言葉に、涙が溢れる。

そんなの、悲しすぎると思って。


もしも、この気持ちが少しでも届いているなら、拾ってほしい。

そんな理由で、見ないフリはしないでほしい。

自分の未来を諦めないでほしい。


「そんなの、辛すぎるっ」


この気持ちはどこへいくの?

どうやって忘れればいいの?


だけど、忘れる事なんてできない。

忘れたくも、ない。


私の世界はこんなにも彼で溢れている。

そんな世界から抜け出す事なんて、不可能。

不可能なの――。




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