嘘つきな君
「汚ったないっ!!」

「神谷常務って、あの神谷!?」

「ちょっと、声が大きいってばっ!!」

「どうなのよっ!!」

「その神谷常務だってば!!」


中腰になって目を見開く仁美の口元に、必死に手をかざす。

よほど驚いたのか、こんなにも取り乱した仁美は初めて見た。

辺りでは私達の大声に目を丸くした人達が、好奇の目でこっちを見ている。

その事に気づいた仁美が、ゆっくりと椅子に体を戻した。


「取り乱した」

「うん。そうだね」


いつものクールな仁美に戻った事を確認して、私も椅子に座りなおす。

だけど、腰を下ろした瞬間、仁美が前のめりになって口を開いた。

今度は、物凄い小声で。


「ねぇ、もう一回聞くけど。神谷常務って、あの?」

「うん。先輩の高校の友達で、神谷ホールディングス次期社長」

「――」

「その神谷常務と、付き合ってるの」


冷静になった所で、もう一度そう言う。

すると、ポカンと口を開けた仁美がフリーズした様に固まった。

それでも。


「うっそ!! 超、玉の輿じゃないっ!!」


再び、取り乱した。
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