嘘つきな君
「何、その膨れっ面」
「なんだか悔しい」
してやったり顔の彼を思いっきり睨みつける。
案の定、余裕そうな顔で見下ろされたけど。
その後、どこかに電話したかと思ったら、直ぐにタクシーがやってきた。
さすがだなぁと思っていると、突然クスクスと面白そうに彼は笑った。
「今日のホテル、楽しみにしてろ」
「え?」
「きっと、お前が喜ぶ」
そう言って、クシャッと私の頭を撫でた彼。
そして、迎えのタクシーの運転手に流暢な英語で会話をしてから、なんともスムーズに私を車内へとエスコートした。
その事にドキッとしながらも、暗雲がたちこめる。
「――…女性の扱いに慣れてるんですね」
「何、そのヤキモチ」
「妬いてません。ただの質問です」
「郷に入っては郷に従え」
「え?」
「海外では、レディーファーストが当たり前だからな」
「――」
「それに、誰にでも、あぁするわけじゃない」
そう言った途端、すっと伸びてきた大きな手が私の頬に触れる。
ルーズにセットされた黒髪が、窓から降り注ぐ太陽の光を受けて、彼の端正な顔に影を作る。
それが、不敵に笑った彼の顔をより一層魅力的にさせた。