嘘つきな君

「……そういうのズルイ」

「何が?」

「別に何でもないっ」


恥ずかしさを紛らわすように、力強くそう言う。

本当に、彼といると心臓がもたない。


そんな事言われたら。

そんな事されたら。

もっと、好きになっちゃうじゃない。


だけど、心に灯った気持ちを素直に言えるはずも無く、頬を膨らませて彼を見つめた。

それでも、そんな私の考えを知ってか、彼はふっと小さく笑ってから、突然私の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。

そして、そのまま優しく私の額にキスをした。

突然の事に、途端に真っ赤になる私を見て、優しく一度微笑んだ彼。

すると。


「仲が良いんですね。彼女ですか?」


車を運転していた男性が、チラリと後ろを振り返ってニッコリと笑って、そう言う。

私でも聞き取れたその英語に、慌てて反論しようとした、その時。


「あぁ。自慢の彼女だ」


何の躊躇もなく、英語でそう言った彼。

驚いて隣を見ると、背もたれに深く体を預けてニヤリと笑って私を横目に映した。

< 233 / 379 >

この作品をシェア

pagetop