嘘つきな君
「……そういうのズルイ」
「何が?」
「別に何でもないっ」
恥ずかしさを紛らわすように、力強くそう言う。
本当に、彼といると心臓がもたない。
そんな事言われたら。
そんな事されたら。
もっと、好きになっちゃうじゃない。
だけど、心に灯った気持ちを素直に言えるはずも無く、頬を膨らませて彼を見つめた。
それでも、そんな私の考えを知ってか、彼はふっと小さく笑ってから、突然私の腕を掴んで自分の方に引き寄せた。
そして、そのまま優しく私の額にキスをした。
突然の事に、途端に真っ赤になる私を見て、優しく一度微笑んだ彼。
すると。
「仲が良いんですね。彼女ですか?」
車を運転していた男性が、チラリと後ろを振り返ってニッコリと笑って、そう言う。
私でも聞き取れたその英語に、慌てて反論しようとした、その時。
「あぁ。自慢の彼女だ」
何の躊躇もなく、英語でそう言った彼。
驚いて隣を見ると、背もたれに深く体を預けてニヤリと笑って私を横目に映した。