嘘つきな君
それから暫くして、パーティーのあるホテルに到着した私達。
今日泊まるホテルは、シンガポールで一番だという高級ホテル。
ロビーから物凄い高級感が溢れていたけど、まるで映画のセットみたいな部屋に、開いた口が塞がらなかった。
「す……っごい」
「だろ? 神谷グループが建てたホテルの中で、今一番新しいものだ」
「こ、こ、これ、神谷グループが建てたんですかっ!?」
「らしいな」
「す、凄すぎる……」
「あっちに庭もついてるぞ」
「部屋に庭!? え、凄い凄いっ!! 噴水があるっ!! ヤシの木もっ!! キャーっ!!」
緑が溢れる庭に、大きな噴水が空に向かって伸びている。
キラキラと光る水しぶき。
磨き上げられた大理石の床。
所々に置かれた、お洒落なソファー。
何もかもが洗練されていて、お洒落で優雅。
まさに、超私好み。
「こ、ここにしばらく泊るんですよねっ!?」
「あぁ」
「あとで探検に行ってもいいですかっ!?」
「あぁ。案内してやる」
思わず仕事だという事も忘れて、子供の様にはしゃぐ。
そんな私を見て、クスクスと笑う常務。
まさか、自分がこんな素敵なホテルに泊まれる日が来るとは思わなかった。
だって、まるで豪華な宮殿にでもいるみたい。
間違いなく、一般市民は泊まれない。
も~神谷グループ万歳っ!!
「常務っ!! 見て!! 早くっ!!」
「走るな。また転ぶぞ」
世界がキラキラと輝いている。
あんなに、これ以上好きになる事が怖かったはずなのに。
今は幸せで仕方ない。