嘘つきな君
1人になった瞬間、張り付けていた笑顔を剥がす。
それと同時に大きな溜息が零れた。
「フィアンセ……か」
握られた手を見つめて、小さく呟く。
込み上げてくるものは、相変らず胸を掻きむしる様な痛み。
それでも、そんな想いを振り払う様に、ブンブンと頭を振ってから渡された資料に目を落とした。
こんな事で、落ち込んでいても仕方ない。
分かっていた事じゃない。
覚悟してる事じゃない。
こんな事でいちいち落ち込んでいたら、この恋なんて続けられない。
強くならなくちゃ。
「さ、仕事仕事~!」
自分に喝を入れて、再び食い入る様に資料に目を落とした。