嘘つきな君
それから、あっという間に日は暮れて、辺りが真っ暗になった頃。
正装に着替えた常務が現れた。
その姿を見た途端、目を見開いて立ち尽くす。
だって、まるで王子様みたいに恰好良かったから。
「か、かっこいい……」
「何? なんか言った?」
「い、いえ。何も」
着慣れた様子の彼が、資料を見つめていた私の方に歩み寄ってくる。
部屋の中が豪華だからか、彼の魅力もより一層豪華に見える。
思わず見惚れてしまいそうになったけど、ゴクリと生唾を飲み込みながら平静を装った。
「よく似合ってますよ」
「あ~窮屈」
「何言ってるんですか。仕事でしょ」
怠そうに首を回しながら、タイピンを止める彼を見てクスクスと笑う。
相変らず外見はパーフェイクトだから、どんな格好も本当に良く似合う。
もちろん、今日のタキシード姿もパーフェクトだ。
「頑張ってきて下さいね」
今日のパーティーに、私は出席しない。
本当はミーハー心で出席したいと思ったけど、ここは我慢だ。
「私は明日の資料に目を通してますから、何かあったら連絡して下さい」
こんな広い部屋に1人なんて贅沢だけど、仕事だから遊んでなんていられない。
そう思って、散らばっていた資料を片付けようとした。
その時。
「何言ってんの。お前も来るんだよ」
突然、彼がそう言った。