嘘つきな君
「はい?」
もちろん、私の返事はこうなる。
振り返った先には、至極当然とばかりに私を見つめる黒目がちな瞳。
その瞬間、まるで私が摩訶不思議な発言をしている気分になる。
「出るって……。今日のパーティーに私は出席しないはずですけど」
「うちの会社主催のパーティーだ。1人増えた所で問題ない」
「いやいやっ!! 第一私、ドレスとか持ってないですから!」
常務の格好を見た感じ、ちゃんとしたパーティードレスを着なきゃいけないような雰囲気だ。
恐らく、テレビでセレブ達がレッドカーペットを歩きながら着ている様な本物のドレス。
間違いなく、私はそんなドレス持ち合わせていない。
だいたい、世界のトップ達が集まるパーティーに、英語もろくに離せない私なんて場違いもいい所だ。
「ドレスを持ってない――だと?」
「だって、そんなもの準備する時間無かったでしょ!」
「おい。俺を誰だと思ってる」
顔の前で両手をブンブンと必死に振って抵抗する私を見て、常務が不敵な笑みを零す。
その、何か企んでいる様な表情と言葉に嫌な予感が湧き起こる。