嘘つきな君


その後、彼が電話で呼んだホテルの女性スタッフにドレスを着せてもらう。

生まれて初めて着るドレスに、胸が一気に高鳴る。

髪の毛も緩く巻いて、アップにしてもらった。


「ピッタリだ……」


鏡の中に映った自分を見て、ポツリと呟く。

海のようなそのドレスは、見事にサイズがピッタリだった。


床まで広がる真っ青なドレス。

濃淡様々な青が折り重なっていて、とっても綺麗。

そして、キラキラと胸元に輝く宝石が眩しい。

まるで夢の中にいるような気分になる。


初めて着る、お姫様の様なドレス。

何度も鏡の前でクルクル回っては、自分の姿を見た。

彼が私の為に用意してくれたドレス。

その事に、嬉しくて泣きだしそうだった。


薄らと浮かんだ涙を押し込んで、恐る恐る部屋の扉を開ける。

そして、慣れない足取りでソファに座る彼の元へ歩いていく。

すると、衣擦れの音を聞いた彼がゆっくりと視線を私に向けた。


「ど、どう……かな」


それでも、なんだか恥ずかしくて顔を上げられない。

ギュッとドレスの裾を握って、目を泳がせた。

すると、ゆっくりとソファから腰を上げた彼が私の元に歩み寄ってくる。

そして、俯いたままの私の手を引いて、近くにあった姿見の前で止まった。


「顔上げろ」


恥ずかしくて俯いたままの視線を、その声に導かれるように持ち上げる。

すると、そこに映し出されたのは、顔を赤くした私。

そんな私の両肩に後ろから手をそっと置いた彼。

そして。
< 243 / 379 >

この作品をシェア

pagetop