嘘つきな君

「似合ってる」


まるで囁く様に、私の耳元でそう言った。

その途端、更に真っ赤になる頬。

鏡越しに見つめられて、息の仕方も忘れる。


恥ずかしくて再び下を向くと、クイッと顎先を持たれて顔を上げさせられた。

視線の先に見えるのは、私の顎先を掴んだまま真っ直ぐに鏡を見つめる彼の瞳。

微かに口元に笑みを浮べて、鏡越しに逃がさない様に私を見つめている。

それでも。


「もっと見せろ」

「――んっ」


独特のハスキーボイスが耳元で聞こえたと思った瞬間、柔らかな唇が降ってくる。

上を向かされたまま、咽返る様なキスが。


「じょ……うむ」

「ん?」

「口紅……取れちゃう」

「だから?」


微かな私の抵抗なんて、全部彼の唇に塞がれる。

崩れ落ちそうになる足に力を入れて、目の前の彼に縋りつく。


すると、まるで支える様に私の腰に片方の手を回した彼。

薄っすらと瞳を開けると、気怠げに瞳を開けた彼と目が合って理性が飛ぶ。




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