嘘つきな君
「変態!」
「分かったって」
頬を膨らませて、ソファーに座る彼を睨みつける。
それでも、すぐに頬が緩んでいく。
あぁ、もう嬉しくて堪らない。
彼が私の為に選んでくれたドレス。
私の為に、作ってくれた時間。
「……ありがとう」
俯いたまま、零れた小さな声。
素直じゃない私の態度に、ふっと小さく彼が笑う。
そして。
「来いよ」
私に伸ばされる、大きな手。
ゆっくりとドレスを引きずって、その手を掴む。
優しく引き寄せられて、彼の目の前で足を止めた。
タキシードに身を包んだ彼は、本当に王子様みたいで見惚れてしまう。
瞳を揺らす私を、余裕そうに見つめる黒目がちな瞳。
そして
「キスしろよ」
「え?」
「今度は、お前から」
ねだる様に、その瞳を細めた。