嘘つきな君
形容しがたい空気が私達を包む。

一体何を言われるんだろうと、身構える。

そんな私から一度も視線を逸らさずに、社長はゆっくりと口を開いた。


「単刀直入に聞く。君は上を目指したいかね」


一度深くソファーに体を埋めた社長が、真っ直ぐに私を見てそう言う。

その突然の言葉に目が点になったけど、思考回路をフル回転させて慌てて言葉を紡ぐ。


「い、いろんな経験は積みたいと考えています」

「ふむ。向上心はある様だな」


質問の意味がいまいち理解できない。

勢いで答えてしまったけど、それでもこれは本心だ。

こんな大企業で働いている以上、いろんな経験ができる環境が整っている。

もともと働く事は嫌いじゃないし、いろんなキャリアを積みたいとは思っている。


頭の中でそんな事を考えながら、真っ直ぐに私を見つめる社長に視線を向ける。

すると、その視線を待っていたかのように、目が合った瞬間、社長は再び口を開いた。


「実は今、新しいプロジェクトを始めようとしているんだ」

「プロジェクト……ですか」

「先日契約を交わした、プレバーという企業と共同出資して始めたプロジェクトだ。今、急ピッチで計画が進められている」

「プレバーといえば、世界屈指のIT企業ですよね」

「あぁ。――そこでだ。社内で優秀な人材を集めてチームを作っている。そこに、君を採用したい」


サラッと言われた言葉に、目が点になる。

言葉の意味が理解できなくて、ポカンと口を開いたまま固まってしまった。


新しいプロジェクトに……私を?


「君は以前、シャルルで広報活動に長けていたと聞いた。そこで、新しいプロジェクトの広報のチーフとして招き入れたい」

「わ、私をですかっ!?」

「不満かね?」

「とんでもないですっ」


だってだって、これはスゴイ事だ。

プレバーといえば、世界に知らない人がいないほど有名な大企業。

そことの共同出資という事になれば、大プロジェクトだ。


そんな大プロジェクトのメンバーに、何万人という社員の中から選ばれたんだ。

認めてもらえたんだ!

社長直々に!


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