嘘つきな君
だけど、ようやく言葉の渦が頭の中に入ってくる。
それでも、その言葉の意味なんて一つも理解できない。
「何を言って……そんな事、出来るわけない」
「もう決めたんだ」
「決めたって……神谷グループは……? 桃香さんは……?」
言いたい事の半分も言えない。
ボロボロと落ちるのは、そんな単語。
それでも、私の言いたい事を把握したのか、微かに瞳を細めた常務は驚く事を口にした。
「園部とは、破談になった」
その言葉に、目を見張る。
際限まで目を見開いて、息を詰める。
「は、破談!?」
「あちらからの要望だ。どうやら『神谷』はフラれたらしい」
「う……そ。だ、だって、桃香さんは、桃香さんは常務をっ!!」
冗談めかしてそう言った常務に、思わず声を上げる。
だって、桃香さんは常務の事を心から好いている。
それは、誰が見ても明白で――。
「彼女から、伝言だ」
訳が分からず詰め寄った私に、冷静にそう告げた常務。
そして、再び息を詰めた私を見下ろして、言った。
「『最後の言葉を、そのままお返しします』だそうだ」
その言葉で、すべてを察する。
彼女の、この行動のすべてを。
思い出すのは、あの宝石箱のような世界での会話。
互いに『羨ましい』と零した言葉。
だけど、覚えている。
最後に私が彼女に言った言葉を。
そして、その言葉を思い出した瞬間、涙が零れた。