嘘つきな君
芹沢 菜緒(せりざわ なお)26歳。
特に秀でた才能もない平凡なOL。
のらりくらりと生きてきて、これまで大きな失敗や苦労を経験した事はない。
順調に進んでいる人生に満足していたし、これからも、のらりくらりと生きていく予定だった。
だから、そろそろ生涯のパートナーでも見つけようかと思っていたのに。
その前に、仕事のパートナーを探すハメになってしまった。
間違いなく、我が人生で一番の危機だ。
「ドラえも~んっ」
「あんた、その困った時のドラえもん頼み止めなよ」
「あの青いタヌキは万能なんだよ~」
「――・・・あんた、ドラえもんファンに目の敵にされるよ」
哀れむ視線で私を見た後、残りのワインをグイッと飲み干した仁美。
大学からずっと一緒にいるけど、相変わらず淡白な親友だ。
「でもさ、前向きに考えなよ。ちょうどいい機会じゃない。あんな小さな会社じゃなくってさ、もっとステップアップできる会社に、この際転職だよ」
「私はあの会社で十分だったの~。それに、このご時世にそんないい職ないよ~。氷河期だよ? 氷河期~!」
「あるある。地道に探せば仕事なんていくらでもあるよ」
追加で頼んだアヒージョをバケットと一緒に口に運んで、余裕な顔で微笑む仁美。
そういう仁美が、一番キャリアを手にしてるんだ。
「マスコミなんてカッコイイ職に就いちゃってさ」
「TV業界も大変なんだよ? ま、楽しいけどね」
「それより、マスコミならこのニュース知ってるんじゃないの~?」
「残念。私は違うセクションなの」
綺麗なボブの髪を揺らして、クスクス笑う仁美。
こういう業界にいる人って、やっぱり美意識が高いのかな。
いつ見ても綺麗な格好をしている。