嘘つきな君
不機嫌そうに息を吐いた彼に、呆れた口調で言葉を返す。


「どうせキツイ事でも言って、泣かせたんじゃないんです?」

「んなわけねーだろ」

「いいえ。十分ありえる話だと思いますけど。思い当たる節があるんじゃないです?」


2人っきりだと分かった瞬間、少しだけ彼との壁がなくなる。

彼も同じなのか、普段社内では見せない様な剣幕で豪快に舌打ちをした。


「――昨日、付き合ってくれって言われた」

「わぁお」

「断ったら、これだ」


深い溜息と共に、眉間に手を当てた常務。

その言葉に、微かに胸に何かが引っかかる。

徐々に視線が無意識に下がっていく。

だけど、そんな姿を見られまいと、ガラス張りの窓の外を興味もないのに覗き込むフリをした。


「モテるんですね~」

「会社は恋愛の場所じゃない。というか、フラれたぐらいで会社を辞めるな」

「女心を分かってないですね、常務は」

「分かりたくもないね」


酷くご機嫌斜めな彼。

初めて会った時と同じくらい、毒舌だ。

そんな中でも、デスクに置かれた書類に目を通して、高速で判子を押している。


< 75 / 379 >

この作品をシェア

pagetop