嘘つきな君
◇◇
「――…南山株式会社とは4日後に最終会議。予算配分の事を気にしてらっしゃったので、会計課と会議が必要です」
「手配しておいてくれ」
「来週の火曜日午後3時からは、葛城理事長との会食。先日海外の学会で好成績を収めたとの事なので、その資料を揃えておきます」
「分かった」
帰りの車の中で、ビッシリと書かれたメモを纏めて簡単に報告する。
すると、窓の外を見ていた常務が私の方を向いて口端を上げた。
「やればできるじゃん」
「言ったでしょう? 物覚えはいいんです」
嫌みったらしい顔を睨みつけてから、カバンの中に手帳をしまう。
そんな私を、彼は満足そうに隣で眺めていた。
あの後、引きづられる様に会社を出て、会議を何本か同行した私。
その後も、会食やら、レセプションパーティーやら、目の回る忙しさの中に身を投じる事になった。
承諾する前に強制連行されたもんだから猛烈に腹がたったけど、彼は少なくとも私達の会社を救ってくれたヒーローであって。
一流企業の常務であって。
私のプライドと意地というものもあって。
生半可な仕事をして、常務に恥をかかせる事だけは避けなければと思い、必死にその場で仕事を憶えた。
幸いにも、物覚えがいい事だけが取り柄の私は、彼がざっくり教えてくれた秘書業務の説明を暗記し、応用して今回は乗り切った。