嘘つきな君
「はぁ……」
出すつもりもなかった溜息が何度も漏れる。
幸せが逃げていくなんて言われているけど、もう私の体の中に幸せな要素なんて一つも残っていない。
不幸ばかり吸い込んで、体が徐々に重くなっていく。
私は一体、これからどうなるんだろう――。
そんなセンチメンタルな感情に浸っていると、突然隣の席に座った男の人が私達の顔を見て固まった。
視界の端でその様子を見たけど、そちらに視線を向ける元気もない私は、再び深い溜息を吐いてワインを口に運んだ。
その時。
「あれ? 仁美と菜緒じゃん」
聞こえてきたのは、どこか聞き覚えのある声。
その声につられて顔を上げると、スーツ姿の男性が少し驚いた顔で私達を見ていた。
一瞬私達の間に沈黙が流れたけど、目の前の人が記憶の中の人物と一致して、思わず指を指して立ち上がった。
「――す、菅野先輩っ!!」
「久しぶりだな~。2人とも元気そうだな」
「元気そうに見えますっ!? これがっ」
「え?」
「全然、元気なんかじゃありませんから!」
思い出の中にある笑顔と同じ様に笑った男性に思わず毒を吐く。
そんな私の言葉に不思議そうに首を傾げた先輩に、仁美が苦笑いを浮かべながら状況を説明してくれた。