朝、目が覚めたらそばにいて
「ヒィ!」

驚いて変な声が出て足がすくむ。

「君、ちょっと来てもらえるかな?」

「私、何もしてないです」

「話を聞くだけだから」

と言いながら、警備員は私の右ひじをしっかりとホールドした。

「サイン会に来ただけなんですってば」

「話は事務所で聞くから」

「イヤー」

なんでこんなことに?
引きずられ、連行されるのを足に力を入れて踏ん張る。

「ここは部外者立ち入り禁止フロアです。そこに立ち入ったんだから事情を聞かなければ帰せないよ。」

「サイン会で持ってくるはずの本を間違えて、大好きな如月千秋先生の本を持って来ちゃったんです」

「はっ?」

「それで動揺して挙動不審になった時に、あなたと目が合って…」

「だからそういうことを今から聞くから!おとなしくして」

その言葉に辺りを見渡すと、騒ぎに気がついた社員らしき人たちが遠巻きにこっちを見ている。
もう、私のバカバカ。
なんでいつもこうなるのよ。
途端に羞恥が激しく込み上げて来てる。


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